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ガーディアンズ・レポート更新だよ(=゚ω゚)ノ
また例によって1ヶ月以上空いてしまった・・・

ガーディアンズ・レポートは月間「徒然なるままになんちゃら」にて、好評連載Σ(゚∀゚

-----------------------------------------------------------

オウトク・シティにある、ガーディアンズ支部に程近い、とある旅館の一室。
その一室に、三つの人影があった。ソード、コウセイ、翠泉である。
三人とも、ニューデイズ風室内着のミヤビカタを着ており、一目みた印象では部屋でくつろぐ旅行客そのものだ。
しかし、その部屋では、誰も口を開こうとせず、翠泉は、タタミの間で、座椅子に腰掛けて雑誌を読み耽り、コウセイとソードは縁側で椅子に腰掛け、ぼーっとして、時折茶を啜るだけである。
二人とも、窓の外に目を向けてはいるが、別段風景を楽しんでいると言う様子ではない。

「あ~・・・ったくもぅ・・・」

やがて沈黙に耐えられなくなったか、ソードが頭をかきながらぼやく。
かといって何か手を打てるわけでもなく、そのまま再び沈黙してしまう。

「・・・あ、レオさんが支部の方に歩いてる。今日の報告かな」
「あぁ・・・今日こそ謹慎解いてくれないもんかな」

そう、ソード等三人は、教団幹部・マーヒン=ダバラの護衛に失敗し、彼が自爆テロによって殺害されたことの罰として、教団の護衛任務から外され、支部の目と鼻の先にあるこの旅館にて、謹慎を命じられていたのだった。

「歩いてるってことは別に急ぎっていう訳じゃないんでしょ。その様子じゃ今日も何事も無かったみたいね」

雑誌から目を放さずに、翠泉は言う。
突如現れた警衛師の姿をした男どころか、マーヒンを警護していた警衛師が自爆テロを行ったのだ。
このことは、教団側にも多少なりとも衝撃があったようで、謹慎が決定する前、窓口となる教団関係者が「早急に調査する」と言っていたのを、コウセイは思い出す。

「警衛師を調査してる間はテロも控えられてるってことか。良いことなのか悪いことなのか」
「悪いに決まってるだろ!
 あんな奴等のせいでマーヒンは殺されて、俺等はもう三日も謹慎。自爆テロなんてろくなモンじゃねぇ!」

翠泉とコウセイの言葉に触発されたか、ソードが大声でまくし立てる。
亡くなったマーヒンには気の毒だが、教団としては、警衛師を調査する、という新たな対策を取ることが出来、手口の一部が判明したという点は大きかった。


教団は「痛み分け」と判断したのだった。


「しかし、なんだったんだろうな、テロリストのあれ・・・」

と、そこまで言った所で、レオが支部から出てくるのが目に入った。
報告にしちゃ随分早いな・・・とソードが見ていると、そのままソード達が宿泊している宿の方向へと向かってくる。

「報告にしちゃ、早いな。もうこっちに戻ってくるなんて。誰かと交代するつもりなのかな?」
「にしたって、そのまま一人で戻ってくるか?」
訝しむソードとコウセイを尻目に、翠泉は本の最後のページをめくり、同じ本を最初から読み始める。
TVも置いてあるが、今は教団関係のニュースやワイドショーの時間で
「ガーディアンズ護衛に失敗!教団幹部・マーヒン=ダバラ死亡!」
などという見出しばかりで見ていられないのだ。

それからしばらく経ち、二人がレオへの興味をなくしかけた頃、部屋の扉がノックされる。

「おーい、三人とも、いるんだろ。ちょっと話がある」

驚いたことに、部屋を訪ねてきたのは、先ほど宿に戻ってきたレオだったのだ。
謹慎中だからといって、スネて出ないわけにも行かず、ソードが腰を上げて部屋の入り口へ向かう。
一番近い翠泉は、未だに雑誌から目を離そうとしないからだ。

「はい、任務に失敗したガーディアンに何の用でしょう?」
「そうスネるな。お前達にうってつけの用事を持ってきたんだ」

一体何事かと顔に疑問符を浮かべるソード。
謹慎中の自分達に、一体何の用事があると言うのか・・・

「いえ、実は用があるというのは、私の方でして・・・」

レオの影に隠れて気付かなかったが、訪問者はレオだけではなかったようだ。
生真面目そうなフレームの細いメガネを掛け、指でズレを直している男が一人。パルム色の強い、糊の効いたスーツを着ており、気候風土で発達した服飾を完全に無視している・・・一目見ただけではビジネスマンか何かにしか見えない。

だがその男のスーツの胸元のエンブレムを見て、ソードは首を傾げる。ガーディアンズのエンブレムを着けているのだ。

「お宅は?」
「申し送れました、私は、ガーディアンズ情報部の者でございます」

『情報部』

その部署名を聞いた途端、対応に出たソード、部屋にいるコウセイ、本を読みふけっていた翠泉が顔を上げ、一斉に男の顔を凝視する。

「・・・情報部が謹慎中のガーディアンに何の用が?」
「ここでは少し・・・なにぶん機密事項ですので。
 レオさん、ありがとうございました。後は彼等と話をさせて貰いますので、これにて・・・」
「あぁ・・・分かった。あんまりこき使ってやってくれるなよ。
 じゃあな、ソード。頑張れよ」

『何を頑張れっていうんだよレオ(さん)』

全員が同じことを感じながらも、振り返って出口へ向かうレオ見送り、渋々ながらも情報部の男を部屋へ招き入れる・・・

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「それでは、お話と参りましょうか。あ、どうぞお構いなく」

デーブと名乗った情報部の男に新たしく淹れた茶を出し、ソードはデーブの対面に座る。コウセイは座布団を用意しただけで、翠泉にいたっては座椅子を横にずらしただけだった。

「それで、情報部からの用事っていうのは?」
「安いお茶ですね、旅館の備品はこれだからいけません」
「用事っていうのは何なんだ?」
「あ、お茶菓子も頂きます」

デーブが茶菓子に手を伸ばしたところで、ソードは器を手に取り、遠ざける。

「とっとと本題に入ってもらないか?こっちは退屈しすぎてイライラしてんだ!」

「おっと、それは失礼・・・
 では、単刀直入に、情報部の仕事を一つ、手伝って頂けないでしょうか?」

『情報部の仕事』
興味の無いそぶりで聞いていた翠泉とコウセイが顔色を変える。当然、ソードもだ。

「何、そんなに険しい顔をしていただかなくても。
 簡単な調査依頼ですよ、情報部は今人手不足でして。海辺での任務になりますので、早期に調査さえ終えていただければ、ちょっとくらい海でバカンスも出来るでしょうし。
 如何でしょう?謹慎がしばらく続くよりは、よっぽど良いと思いますが」

「海辺で調査、ねぇ・・・俺達に難易度の高い任務を回すわけじゃない、と考えてもいいんだろうな?」
「それはもちろん。多少トラブルはあるかもしれませんが、本当に簡単な調査任務ですよ。先ほども言いましたが、星霊祭が近く、毎年恒例の「幻視の巫女暗殺予告」の調査に人が割かれている状態でしてね」

なるほど、筋は通っている、とソードは感じた。
『幻視の巫女暗殺予告』は、本気、悪戯を問わず、毎年無数に届けられているのだ。所詮悪戯、とはいっても、過去に何度か実際に襲撃が行われた事があり、調査しないわけにはいかない、ということだろう。

「なるほど・・・しかし、他部署の仕事手伝わされるんだ、手当ては付くんだろうな」
「えぇ、こちらの仕事を終えていただいた暁には、現在の任務へ即時復帰できるように、と話はついています」
「・・・即復帰が報酬?
 ちなみに、これを断った場合、俺達はいつまで謹慎なんだ?」
「現在進行中の任務終了から1ヶ月間の謹慎となっております。
 今は教団が内部調査中で、護衛任務は最低でも1ヶ月は続く見通しですから・・・およそ2ヶ月は謹慎が続くことになります」

「いいわ、私やるわよ!その仕事」

それまでやる気なさげに聞いていた翠泉が、およそ2ヶ月と聞いた瞬間に積極的になり、デーブに詰め寄る。
謹慎中は無口になって殆ど喋らなくなっていたが、相当腹に据えかねていたらしい。

いきなりの剣幕に、デーブもさすがに少したじろいでいる。

「わ、分かりました。では、皆さんの分用意してありますので、機密保持契約に署名をお願いします」

デーブから書類を受け取ると、翠泉はとっとと自分の分を署名し、残り2枚をソードとコウセイの前に突き出してきた。

決定権はお前にあるのか・・・

コウセイはスラスラと署名したが、ソードは、最後だけ翠泉に持っていかれた徒労感から、肩をガックリと落としながらも、機密保持契約に署名した。彼としても、最低2ヶ月も謹慎が続くというのはゴメンだったからだ。

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その次の日

オウトクシティから、ニューデイズの象徴であるオウトク山を大きく迂回した場所にある、リトー隔離地区。
その小島の周囲を、教団による巡視艇が常に警備体制を敷いている。

しかし、巡視艇が警戒しているのは主に海上、空からの不審物であり、船を操る警衛師達は、海底スレスレを奔る巨大な円筒形の金属塊に気付くことは無かった・・・

海上に悟られぬよう、しかし素早く海底を進む金属塊は、リトーの壁面に到着すると、激突寸前の位置でピタリと停止した。
そして、金属塊の中腹がパカリと開き、中から黒い物体が三つ浮き出てきた。その黒いモノは、円筒形から離れ、どんどん浮上して行き、三つの物体を吐き出した円筒形は、それを見届けることなく、突入時と同じ姿勢のまま、後ろに下がり始めた。

やがて、円筒形から出てきた三つの物体は、海面に頭を出し、丁度目の前にあった洞穴、恐らく波の浸食で削られて出来た僅かなスペースへ、身を乗り出した。

「ふぅ、今のところ巡視艇は無し。
 とりあえず、無事に乗り込めたな」
「まだだ、そんなに高くないとはいえ、この後崖のぼりもしなきゃいけない」

黒い物体のうち二つは海から上がると、洞穴の周囲に巡視艇が無いかを警戒しながら、ひとまず安堵の息を漏らした。

「アイタタタ、もうマスク外すわよ。耳が曲がっちゃうわ」

最後の黒い物体が、自分の頭部を掴み、一気に引っ張りあげる。
黒いマスクの下から表れたのは、横に伸びた長い耳のが斜めに曲がってしまった、翠泉であった。

マスクを外した翠泉を見て、肩をすくめた残りの二つの物体も、翠泉に続いて、自分の頭を掴んで引っ張りあげる。
出てきたのはコウセイと、同じく耳の曲がってしまっていたソードだった。

「ニューマンの耳はこういう時辛いな、二人とも」
「こんな仕事させられる火が一生のうち何度あるっていうんだよ」

ぼやきながら耳の曲がりを修正していたソードは、すぐには直しきれないと諦め、マスクに続いて、黒いウェットスーツを脱ぎ始める。
「ほら、さっさとこんな仕事済ませちまおうぜ。
 通信機なんて持たされて無いんだから、12時間後に戻ってこれなきゃ置き去りだぜ」

コウセイは、着替えるより先に、探索ツール類を取り出し確認しようと、ナノトランサーから取り出し、並べ始めたが、ふと翠泉の方へ目を向け、すぐに気まずい表情で立ち上がり、ソードの横に並び、スーツを脱ぎ始める。

「今こっち振り向いたら殺すわよ」
「言われなくっても貧乳なんて見たくな」

ゴスッ

こぶし大の大きさの石がソードの後頭部を襲う。
鈍い音が大した広さも無い洞穴に響き、コブを作ったソードも、これ以上やられてはたまらないと思い、それ以上何も言わなかった。

------------------------

同盟軍のアーミージャケットを改修した、潜入・調査ミッション用の特注スーツに着替え終わった三人は、洞穴から身を乗り出し、手ごろな足場になりそうな出っ張りを探す。

「崖のぼりなんて訓練メニューにないんだけどな」

丁度いい足場を見つけ、まずはコウセイが足を掛ける。ニューマンより力の強い彼が、先に登って残り二人のための足がかりを作るためだ。
接触させるだけで、フォトンの杭を壁面に打ち込む登山ツールを次々と打ち込んで行き、10メートル程度の崖を、スムーズに登ってゆく。

「よし、いいぞ二人とも。登ってきてくれ」

難なく崖を登りきり、下にいる二人に手を振り、呼びかける。
それを聞き、今度はソードが登り始め、それに翠泉が続く。

「よっと。中々様になってたじゃないか。今日はまだバテてないようだしな」
「●リーの時は例外だ。二日酔いだったからな」
「・・・次の日に残るほど飲むんじゃないわよ」

コウセイの作った足場が存外に登りやすく、素直に感心していた二人だが、その心は急速に冷めていった。

「さて、それじゃ、調査といきますか。地図を見せてくれ、下戸のコウセイ君」
「別に下戸って訳じゃない。これだ」

コウセイが取り出した地図には、三人が上陸した、島の縁の崖に小さい丸が記されていた。
そして島の中央、整地された広場のある点に、赤い点がつけられている。

「この赤い点が目標地点。警衛師が隙無く警備してるらしいから、見つからずに調査を続けるのは難しいな」
「アラ、一瞬で失神させるくらい、楽勝よ」ピシッ!
「いや、翠泉?見つかったらダメってこと分かってるよね?鞭なんか振られたら一瞬でバレるぞ」
「だから気付かれないくらい一瞬で・・・」
「音を立てるのがマズいんだよ!」
「そっか、残念・・・」
「二人までなら一瞬で制圧していくしかないな」

残念そうな顔をする翠泉を放置し、ソードとコウセイは鎮圧用のスタン・ダガーとバトンをそれぞれ取り出し、地図の赤い点の方向に向かって歩き始める。渋々ながらも翠泉も続く。


数時間後


目的地である広場へ辿り着き、警備の範囲ギリギリの草むらに身を潜め、目標の建物を確認している。
これまでの道のりで、二人一組の警衛師を5セット、全部で10人を打ち倒し、持ってきたロープで拘束している。喋れないように仮面の口の部分を接着しているが、後数時間で交代に来た警衛師に発見されるだろう。それまでに決定的な情報を発見しなければならない。

「でかい穴が開いてるな。多分あそこに突っ込んだってことだなきっと。搭乗型の大型マシナリーでも使ったか?」
「それよりどうやって建物に入るかだ。警衛師が多すぎる」

半壊した建物の周囲には、二人一組の警衛師が無数に、死角無く警戒しており、今までどおりに倒して進むわけにも行かない。
これ以上近づくことは警衛師に発見されることを意味する。

「どうにかして警衛師の注意を逸らせるしか無いな・・・」
「あ、いいこと思いついたわ」

そういって、翠泉がウォンドを手にして一歩下がる。

「翠泉が名案だなんて、一体どういう風の吹き回しだ?」
「こうするのよ」

翠泉が手にしたウォンドを一振りする。
その直後、建物の周囲を警戒していた一組の側面の空間で爆発が起こり、至近距離で起こった衝撃と爆音に脳を揺らされ、横に吹き飛びながら二人がくずおれる。

目前でラ・フォイエの爆風を浴びせることで警衛師を吹き飛ばしたのだ。

「んなっ!?」
「ほら、いってらっしゃい」

突然の凶行にソードが絶句した瞬間、彼の背中に衝撃が走る。
一瞬平衡感覚を失ったソードが、次に自分の場所を確認した時、何故か尻を天に突き出した体勢で地面に倒れており、そこは警衛師の警備のテリトリーの中であった。
当然、即座に警衛師に取り囲まれ、杖を突きつけられる。

「何奴!」
「こんな所で何をしている!」
「動くな!お前を拘束する!何処の者だ!」

・・・・・・・・

「・・・ンのやろぉぉぉぉぉぉぉ!!」

翠泉にハメられたソードは、やけくそ気味に立ち上がり、スタン・ダガーを構えて正面の警衛師に飛び掛る。
咄嗟の攻撃だったため、一人をダガーで気絶させるが、既に取り囲まれていた状態のため、それ以上動くことを許されず、警衛師に取り押さえられる。

ソードが地面に縫い付けられる形になった時、目的の建物の目前で、再度爆発が起きる。

そちらに警衛師の目が向いた瞬間、ツインハンドガンを持ったコウセイが物陰から飛び出し、こちらも非殺傷の鎮圧弾を、爆風に目を取られた警衛師達に撃ち込んでいく。

ソードを取り押さえていた警衛師が全て沈黙し、拘束の解けたソードが、鎮圧弾で撃ち漏らした警衛師をスタン・ダガーで確実に仕留めていく。

この間およそ30秒。建物の警備を行っていた警衛師十数名を、全て沈黙させた。

「よぉっし、それじゃ調査に取り掛かりましょうかっ☆」
「ましょうかっ☆、じゃねぇよぉぉ!見つかったらどうするつもりだったんだ!」
「だからあなたを囮に使って、無事全員仕留められたんだから良かったじゃないの」
「結果論で物を語るんじゃねぇぇぇぇぇ!!」
「うるさい」

すさまじい剣幕で突っかかるソードの、大きく広げられた口に、翠泉は無造作に取り出したトリメイトのボトルを突っ込んで黙らせる。
昏倒させた警衛師達を縛り上げていたコウセイは、
片足を上げ、両手を広げた構えで奇声を発し翠泉をけん制するソードと、鞭と警衛師の物らしき十字架を振り上げ身構える翠泉を見ながら、ため息をついた。

「二人とも、とりあえず、じゃれあってないで調査に移ろう。これ以上時間をかけると危険だ」
「だから!誰のせいで危険になっていると!」
「うるっさいわねぇ、しつこいのよ!じゃああのまま何時間も待ってろっていうの?」
「そうは言わないが、潜入捜査だってのをもっと考えて・・・」

止まるどころかなお加熱する言い合いに、コウセイは更に深いため息をついた。

そして二つの銃声が広場に響き渡った。

「頼むから、静かに、調査を、済ませて、早く、帰ろう」
『・・・はい』

鎮圧弾を額に受け、青あざを作った二人は、ようやく静かになり、建物の穴へ向かったコウセイの後に続く。

「かなり広いな。隔離地区って聞いてたから、てっきり牢屋みたいな場所を想像してたが・・・」
「そこそこ位の高い奴を幽閉してたってことじゃないのか?牢って言うよりはちょっとした別荘だなこりゃ」

壁の大穴から目標の建物に侵入した三人は、『幽閉場所』というイメージから大きくかけ離れた内装を見て呆気に取られる。
部屋に敷かれた絨毯の柔らかさに、くるぶしまで埋まりながら、ソードは部屋を見回しつつ、本来の部屋の入り口へ向かう。
豪華な部屋ではあるが、窓の位置は高く、格子が嵌めてあるし、開け放しにされていた本来の入り口の扉も、表面は木目が美しい高級木材だが、廊下側には複数のキーロックが着けられている。

「警備としてはかなり厳戒だったみたいだな」
「でもさすがにこんな大穴あけるような攻撃には無意味よね。それにしても、狙われたのはこの建物、それも外からだけ。もしかして、テロリストとやらには目的の場所が最初から分かっていたんじゃないかしら?」
「でもどうやって?この島の本来の目的を知ってるのは、教団幹部くらいしか・・・いや、他にもいるな」
「幹部以外がどうやってここのこと知るっていうんだよ?自分の立場が危うくなるだけだぜ?」
「実際に警備に当たる警衛師よ。多分その警衛師の何人かがテロリストの仲間で、目的の人物がここにいることを伝えたのよ。
 マーヒンの時のこともあるし、そういうスパイみたいなの、結構多いんじゃないかしら」

翠泉とコウセイの推測を右から左へ聞き流しながら、ソードは部屋を出入りしながら入り口付近を調べる。警衛師の中に敵が紛れていることは、マーヒンの件で明白だし、教団だってそのことで現在内部調査中の筈だ。大したことではない、というのがソードの感想だったからだ。

廊下側を調べていて、ふと足元に目を向けると、小さな木片が落ちているのを見つけた。
何かと思い、二つあるそれを拾い上げると、どうやら誰の部屋であるかを表す表札のようであった。襲撃の振動で落ちたのか、と思い二つの木片をつなぎ合わせると、それは一つの名前を表すようになった。


ドウギ・ミクナ


「・・・!
 おい、コウセイ!翠泉!見つけたぞ!この部屋が誰ので、テロリストの目的が、何だったのか、分かった!」

室内へ顔を覗かせ、二人を手招きで呼び寄せ、拾い上げた表札を突きつける。
瞬間、二人の顔も強張る。三人とも、この名前に見覚えがあったからだ。

ドウギ・ミクナ
幻視の巫女の父親で、教団の名家であるミクナ家当主。教団内で、イズマ・ルツと苛烈な権力闘争を繰り広げていたことで有名だ。
またテクニックの研究者でもあり、遥か昔に封印された術式で、緊急時の生命維持のため、紋章という形で回復テクニックを埋め込んでおくという「星霊紋」技術を復活させた人物でもある。
だが、強大な権力を私物化し、あろうことかローグスと裏で繋がっていたことが公になり、教団内部での権力闘争に敗れたらしい。

「ここを襲撃したマシナリーは甘い汁を吸っていたローグスからの提供というわけか。教団内部の争いだけでここまでの装備は用意できないだろうしな」
「でも、権力の座から追われた以上、ローグスからしてみれば利用価値なんて無いんじゃないかしら?」

再びコウセイと翠泉が推測を口にしだした直後、にわかに外が騒がしくなる。
そして複数の人が走る足音が聞こえ、気絶させた警衛師を纏めていた広場の辺りへ集まってくる。

「マズイ!人が来たぞ!」
「交代の警衛師がきやがったか。
 広場に集まって来るだろうから、部屋の穴から脱出は出来そうにないな」
「仕方ないわ。広場に人が集まってる内に、玄関から逃げましょう」
「どうせ見つかるだろうけどな。旨く撒いて逃げ切るしかないな」

そういうが早いか、ソードが真っ先に走り出す。建物の構造は分からないが、広場に居た時玄関の位置は確認していたため、とりあえずそちらの方向に走る。
玄関はすぐに分かったが、案の定、既に広場の周囲を探る形で、数人の警衛師が建物近辺を警戒していた。

いちいち構っていられないとばかりに、ソードは玄関から飛び出すと同時に飛び上がり、こちらに気付いていない警衛師の一人に飛び蹴りを喰らわせる。
不意打ちを喰らった警衛師はその一撃で吹き飛ばされ倒れ伏すが、もう一人の警衛師が着地したソードに向かって杖を振り上げるが、そこまでだった。
杖を振り上げてがら空きになった胴・鳩尾へ、立ち上がる勢いを乗せた拳を振り上げ、くの字になって呻く警衛師の仮面ごと、続く左でこめかみを打ち抜く。

幸いにも当面の敵は排除できたが、今の音を聞きつけた、広場にいた警衛師達が、何事かとこちらへ向かってくる足音が聞こえる。

「おい、今の内に早く!」

追いついてきた翠泉とコウセイに声をかけ、ソードは森の中へと駆け出す。
それに翠泉も続くが、コウセイは一瞬広場を振り向き、手持ちのトラップを複数個、警衛師の進路上に放り投げる。

「OK,これで少し足止め出来る筈。顔を見られたらまずい、ソード、翠泉、マスクを」

トラップと一緒に変装用の目出し帽を取り出し、走りながら器用に被るコウセイ。
ソードと翠泉もそれに続こうとするが、二人とも、上陸した洞穴の中にマスクを投げ捨ててきたことを思い出し、何か無いかと、走りながら背中のナノトランサーを弄る。

そして二人して被り物を発見し、それが何かを確認することなく、身に着ける。

「・・・で、なんでサングラスだけなんだ」
「馬鹿野郎、変装といったら黒塗りのサングラスと相場が決まってる」
「・・・じゃあ翠泉は何故ショートヘアカツラなんだ。顔隠せてないし」
「髪が長い短いだと結構印象って違うものよ」

二人揃って適当極まる返答だが、無いよりはマシかと思い直し、目出し帽、サングラス、ショートヘアの三人は道なき道を走り、情報部と合流予定の最初の洞穴へと直進する。

目的地までを最短ルートで走り続ける三人だが、休み無く走り続けられる距離では無く、途中三人は、走るのを止め、息を整えながら歩いて進む事にした。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・ここまでくればもうすぐだ、警備エリアからは外れた場所だし、もう大丈夫だろう・・・」
「そうね、あの洞穴なら見つかることはまず無いでしょうし・・・」
「・・・・・・」

コウセイは既に息も絶え絶えで喋ろうとしない。目出し帽で顔が暑くなるのがこたえているのかもしれない。

「いたぞー!!」

だが休む暇も無く、警衛師の声が響き渡る。発見された。

「クソッ、もう少しだってのに!走って振り切るしかないか」
「コウセイ、走れる?」
「・・・なん、とか、な・・・」

三人は走る。
目的地である崖まで残り100メートルを切った。

90

80

70

60


残り50メートルに差し掛かった所で、走る三人の背後で爆発が起こる。追い付きつつあった警衛師が、ラ・フォイエでこちらを吹き飛ばそうとしたのだ。
足を酷使した三人は背後からの衝撃に堪えることが出来ず、爆発の勢いに後押しされ、大きく地面を転がっていった。

「追い詰めたぞ!観念しろ!」
「この不埒者め!一体どこの組織の者だ!」
「ここを教団の私有地であると知っての狼藉か、タダでは済まんぞ!」
「動くな!下手に動けば命の保障はせぬぞ!」

続々と警衛師がこちらに追いつき、崖を背にした包囲網が形成されつつあった。
転倒から一番先に立ち上がった翠泉は、起き上がり様にウォンドを取り出すが、既に囲まれた状況のため、それ以上の行動は出来なかった。精々が、あくまで警衛師に背を向けて立ち上がるだけだ。

「手を上げろ!その杖を捨てるんだ!」

複数の警衛師に杖を突きつけられ、遅れて立ち上がったソード、コウセイ共々、渋々ながら両手をあげる。

「仕方無いわね・・・ホラ」

両手を挙げたまま、手首のスナップを利かせ、手にしたウォンドを放る翠泉。

(お手上げか・・・)
(まさに言葉通りだな)

下手に動くこともできず、顔を動かさず僅かな声で話すソードとコウセイ。
だがこのとき、最後の武器を捨てて絶望的な状況にもかかわらず、翠泉は口角が緩んでいた。

「飛ぶわよっ!」

突如翠泉が叫ぶ。
何のことか、と思った二人の背中に、先ほどのラ・フォイエと同じく、凄まじい衝撃が襲う。
だがラ・フォイエと違い、熱波を感じることはなく、何故かむしろ眩しさを感じていた。

「・・・!レ・グランツか!」

起き上がり、杖を取り出した時、翠泉は既にテクニックの準備を終えていたのだ。
そしてフォトンの充満した杖を投げ捨て、地面にぶつかった衝撃で、杖のリアクターに集められたフォトンが一気に外に溢れ出したのだ。
杖に込められていたレ・グランツ、閃光と衝撃により全方位の敵を吹き飛ばすテクニックが発動し、その衝撃で三人は一気に崖に向かって吹き飛んでゆき、警衛師達も数人は衝撃で吹き飛ばされ、閃光に視界を奪われる。

崖から放り投げられる瞬間、コウセイは自分が崖に打ち込んだ杭と、杭を繋いだロープが目の前にあると気付き、咄嗟に手を伸ばす。フォトンの出力が弱まっていた杭は、引っ張られるロープにつられて次々と抜けて行き、これで追ってこれまい、とコウセイが思った瞬間、三人はそれぞれ、顔、正面、背中から海面に叩きつけられた。


水面に叩きつけられた衝撃で、上か下かも分からない状態に放りだされた三人は、それぞれにもがいてみるが、殆ど動くことなく水をかくだけだ。

このままでは溺れる・・・そう悟ったソードは、視界の向こうに、黒い円筒が見えたような気がした・・・

------------------------------

ソード達の前に現れた黒い円筒、小型潜水艇の部屋の中、計器類だらけの操縦室の隅に、ソード、コウセイ、翠泉は寝かされていた。三人とも水中艇に回収され、医務室等無いので操縦室に放置されているのだ。

「起きてください、これくらいで死んでもらわれては困ります」

操縦桿を握っていた男・情報部のデーブは、空になっていたマグカップに水を入れ、ソードの顔に掛ける。
僅かにうめき声を上げ、ソードがゆっくり目を開ける。

「・・・マズイ。浄水器くらい着けとけ、よ・・・」
「それは失礼を。ニューデイズのきれいな海の水はいかがでしたか?」

むっくりと上体を起こしたソードに、丁寧な口調で皮肉を言うデーブ。
意識がはっきりしてくると、デーブの皮肉を理解できたのか、苦い顔になる。

「アンタか・・・恨むぜ、こんな仕事押し付けやがって」
「それはあなた方次第ですよ。最後のドンパチはちょっとやりすぎでしたね」
「なんで分かってるんだよそのこと・・・」
「あなた達の作業服に仕込まれた機器から、そちらの行動はモニター出来てましたから」

監視付きかよ・・・ソードは苦い気分になるが、まぁ仕方の無いことなのかと思い、そのことは気にしないことにした。
元々機動警備部にスパイの真似事させる事自体無茶苦茶である。最悪の場合自爆でもさせらてしまいそうだ。

「・・・俺、もう一回寝る。結果、は分かってるだろうから報告とかは後にしてくれ」
「分かりました、オウトク・シティに着きましたら起こしますね、良い夢を」

悪夢しか見れそうに無いっての・・・疲労に軋む身体を横たえ、ソードは心の中で悪態を付き、すぐさま意識が飛んでいった。

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